筋トレを効率的に進めるための知識-運動単位とサイズの原理について-

原理・原則

はじめに

筋肉が動く仕組みを考えることは、トレーニングを効果的に進める上で役に立つ場面が多いと思います。
今回は、筋肉を操っている脳が指令を出した時に筋肉がどう反応していくか、筋肉が力を入れて収縮しようとしているときに何が起こっているかを考えて、効果的な筋トレに必要な要素を解説していきたいと思います。

筋肉が動く仕組み

筋肉はいくつもの筋線維が束になって出来ています。筋肉が力を入れて収縮するということは、筋肉を構成している1本1本の筋線維が力を入れて収縮していることになります。
その筋線維は神経とつながっていて脳からの指令を受けて動きます。この筋線維と直接つながっている神経が運動神経です。

1本1本の筋線維の働き方はデジタル型です。力を入れて収縮しようとするか何もしないかの2パターンしか存在しません。それでも力加減が可能なのは、筋肉の中で働いている筋線維の数が違うからです。
負荷を乗せてバーベルカールを行う場合は、上腕二頭筋の筋肉の中で働く筋線維の数が多くなり、何も持たずに肘を曲げる運動では少ない数の筋線維が働いていて他の筋線維は何もしていないということになります。

また、1本1本の筋線維はそれぞれ1つの運動神経とつながっているわけではなく、1つの運動神経が枝分かれして複数の筋線維を同時にコントロールしています。この1つの運動神経と、それが支配している複数の筋線維はまとめて運動単位(モーターユニット)と呼ばれます。筋肉の中にはこの運動単位(モーターユニット)がいくつも集まっていて、大小の力を加減しながらさまざまな動きを作り出しています。

運動単位(モーターユニット)

運動単位の働き方も筋線維の場合と同じようにデジタル的な制御によって動きます。脳からの指令を受けた運動単位の中の筋線維はすべて同じように力を発揮(収縮しようと)します。

運動単位の大きさ(1本の運動神経に対してつながっている筋線維の数)は体の部位や筋肉によって変わってきます。
大きな運動単位は細かな作業には向いていませんが大きな力を発揮することが出来ます。例えば、ジャンプしたり走ったりするための下半身の筋肉などは細かな制御より大きな力を発揮することが重要ですから大きな運動単位が複数存在しています。
逆に小さな運動単位は、大きな力は生み出せませんが細かく繊細な動きが可能です。顔や手、指などを動かすときには、細かく繊細な動きが必要になりますので、小さな運動単位がいくつも集まっています。

また、筋線維の種類も運動単位の大きさと関連しています。筋線維には大きく分けて遅筋繊維速筋線維に分かれます。
基本的に速筋線維は大きな運動単位に含まれます。速筋線維には大きな力を発揮する役割がありますので、1本の運動神経から多くの筋線維がつながっている大きな運動単位に構成されます。
一方、遅筋繊維は小さな運動単位に含まれます。遅筋繊維は姿勢を維持したり、細かな作業をしたりと比較的小さな力を持続的に発揮することが多いですから運動単位も小さくなっています。

サイズの原理

トレーニングや運動において、それぞれ大小の運動単位が使われる順番には規則性があります。基本的には小さな運動単位から動員されていきます。(サイズの原理)

小さな運動単位に含まれているのは主に遅筋繊維です。力を発揮していく際にはまず遅筋繊維から働き速筋線維は後回しになります。これは、遅筋繊維が酸素を使うことによって効率的にエネルギーを生産することが出来て体にとっては都合が良いからです。
速筋線維はスピードもパワーも強いのですが、耐久性が悪いためすぐにエネルギー切れになってしまい体にとって効率が悪いです。

運動中は体全体として省エネになる遅筋繊維からまず使われて大きな力を出す必要が生じたときにだけ速筋線維が使われる仕組みが体の中で働いています。
そのため、負荷強度の低いトレーニングでは遅筋繊維しか働いていないということになります。
筋肥大やダイエットを目的としたトレーニングでは、速筋線維を刺激することが重要ですから、出来るだけ高重量を扱って遅筋繊維だけでは足りず速筋線維が動員されるような負荷強度にする必要があります。

またサイズの原理が適用されない例外もあります。それが「瞬発的な力発揮」と「伸張性(エキセントリック)収縮」の場合です。

「瞬発的な力発揮」の場合とは、短距離走のスタートダッシュなどです。この場合、エネルギー効率の良い遅筋繊維から使っていたのではスピードが出ませんから、速筋線維を含む大きな運動単位を優先的に使う必要があります。
サイズの原理に反して、運動のはじめから大きな運動単位を動員させる筋肉の使い方は、トレーニングによってレベルアップさせることが出来ます。ウエイトトレーニングにおいても爆発的挙上といったテクニックは、はじめから大きな運動単位を動員させるための有効な方法だと言えます。

爆発的挙上とは、トレーニングにおいてウエイトを挙上する際に、対象となる筋肉に力加減することなく最大限の力を常に出し続ける意識をして速筋線維を働かせるテクニックです。クイックリフトなどとは別物で意識的なテクニックです。

「伸張性(エキセントリック)収縮」の場合とは、筋肉が力を入れながら引き延ばされている状態のことですが、例えばジャンプした後の着地のように運動にブレーキをかける場面です。運動を止める場面では、その衝撃を確実に吸収して安全に停止することが求められます。そのため、効率的な遅筋繊維から悠長に使っていては衝撃を吸収できず体の組織が壊れてしまう危険性がありますから、この時には効率を度外視して大きな運動単位から働きます。
ウエイトトレーニングにおいても、ネガティブ(ウエイトを下ろす)動作の方が、ポジティブ(ウエイトを上げる)動作よりも筋肉がより強い力を発揮することができます。

まとめ

筋トレにおいて大切なことは、大きな力を発揮してより多くの運動単位を動員させることで、筋肉全体に刺激を与えることです。
筋肉の成長のためには速筋線維への刺激が重要で、速筋線維は大きな運動単位に支配されています。
速筋線維を総動員させるためには、ある程度高重量を扱い、さらに爆発的挙上といったテクニックを使いながら、トレーニングのはじめから速筋線維に働いてもらうことが筋成長のカギとなります。当然、筋肥大には食事も重要です。筋肉が成長するのに必要なカロリーとタンパク質を摂取している必要があります。

筋肉の成長というと誤解する人もいるかもしれませんが、ダイエット目的で筋トレをしている人にとっても同じことです。ダイエット中に筋トレをする目的は、食事からとった栄養が体脂肪ではなく筋肉に優先的に運ばれる状況を作り出すことなので筋肉の成長を促す刺激が必要になります。体脂肪の減少は食事管理で摂取カロリー<消費カロリーの状況を作り出すことで実現します。
筋線維の特徴や爆発的挙上のテクニックについては下記の記事でも解説しています。

食事管理については下記の記事もあわせてご覧ください。

さいごに

今回は、筋トレで刺激している筋肉が動く仕組みを筋線維や神経、運動単位といった点から解説していきました。

運動中の筋肉の働きについて解説していきましたが、体の中の仕組みというのは科学的にはまだ解明されていないことが多くあります。トレーニングのどの刺激が体にどんな反応を起こしていくのかなど解明されていないことは多いです。しかし、筋トレは昔から多くの人が実践していますから、筋肥大やダイエットに効果的なトレーニング方法はある程度分かっています。

結局筋トレで大事なことは、とにかく重いものをもって限界までやって筋肉をヘトヘトに疲れさせるということなので、あまり細かいことは気にしなくてもいいのかもしれません。

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