筋トレによる筋肥大の仕組み

原理・原則

はじめに

適切な負荷で筋トレを行うと筋肉が成長します。
これは当然のことですが、実は科学的に筋肥大のメカニズムは、完全には解明されていないです。

筋トレによって筋肥大が起こることは、ボディビルダーなどの多くの実践者たちのおかげで、事実が認識されているにすぎません。

今回は、石井直方著「石井直方の筋肉の科学」から、徐々に解明されつつある筋肥大のメカニズムについて紹介していこうと思います。

筋肥大の2つのメカニズム

筋肥大には大きく分けて2つのメカニズムが関係していることが分かっています。「筋線維再生系」と「タンパク質代謝系」です。まずこの2つについて紹介していきます。

筋繊維再生系

筋線維再生系は、トレーニングにより筋線維が壊れたり傷ついたりしたときに、筋線維を再生する仕組みです。筋線維を増やしたり、補修しながら少しずつ太くなったりすることによって筋肉が成長します。

筋線維には筋サテライト細胞と呼ばれる、筋線維のもととなる細胞がペタペタとへばりついています。筋サテライト細胞は、普段は眠ったような状態ですが、筋トレをすると目覚めて増殖します。そして、新しい筋線維を作ったり、もともとへばりついていた筋線維に融合して新たな核を作ったりします。核は細胞の機能を制御する司令部のようなものですが、その制御できる範囲は上限があると考えられています。筋線維には長く大きなものも存在しますから、そういった細胞には核が複数あります。そのため、筋線維が太く大きく成長していくためには筋線維の中の核を増やすことも必要です。

タンパク質代謝系

筋線維の中では、タンパク質が合成されたり分解されたりしています。タンパク質の合成が分解を上回れば筋線維自体も太く成長していきます。これがタンパク質代謝系の仕組みです。タンパク質の合成と分解は切り替えスイッチのような仕組みになっていて、どちらかが上がるとどちらかが下がります。筋トレを行うと、タンパク質の合成が上がり分解が下がるため、筋肉の中のタンパク質の量が増えていき筋肉が成長します。

タンパク質の合成を高める刺激としてmTOR(エムトール)と呼ばれるタンパク質キナーゼが注目されています。これが細胞内でのタンパク質の合成を刺激すると考えられています。

筋トレにより筋肉に負荷がかかると、mTORがリン酸化され、さらに周辺の化学反応も誘発します。その結果タンパク質の合成が高まり分解を抑えることが分かっています。
そのため、mTORのリン酸化を進行させるようなトレーニングが筋肥大に効果的だと考えられています。
しかし、筋肉の使い方次第でmTORのリン酸化状況は容易に変化してしまい、どのようなトレーニングが効果的なのかはまだ解明されていません。
筋肉が負荷を受けて徐々に引き延ばされていくエキセントリック状態でmTORのリン酸化は進行してタンパク質の合成を促しますが、急ブレーキをかけるような過激なエキセントリックの刺激を受けると、逆にタンパク質の分解を進めてしまいます。

筋トレの何が筋肉を太くするか

筋肉が成長していく筋肉内部の仕組みというのはある程度分かってきていますが、筋トレのどのような要因が筋肉の成長を促しているかという、上流の仕組みについては詳しく分かっていません。
それが分かれば、筋肉を成長させるための1番効果的なトレーニングが分かるかもしれません。

筋トレが筋肉を成長させる要因としては以下のものが想定され、それぞれが複雑に絡み合っていると考えられています。

  • メカニカルストレス
  • 代謝環境
  • 酸素環境
  • ホルモン・成長因子
  • 筋線維の損傷・再生

この中でも特に大事だと思われるメカニカルストレスについて解説していきます。

メカニカルストレス

メカニカルストレスとは力学的刺激のことで、筋肉に強い力が加わったときにそれに抵抗したり耐えたりするための適応現象として筋肉が太くなります。この現象は単純で非常に分かりやすいですし、多くの実践者たちの経験からも実証されています。

過去の多く実践者による経験から、1RMの80%の負荷で8回3セットという方法は筋肉を成長させるために効果的だと考えられています。
筋肉を太く成長させるには速筋線維を使わなければなりません。筋肉は弱い力を出す際は、よりエネルギー効率の良い遅筋繊維から働きはじめます。ある程度以上の負荷を扱わなければ速筋線維が働かず筋肉は太くなりませんから、この方法は効果的だと考えられます。

筋線維については下記の記事もあわせてご覧ください。

また、加圧トレーニングで筋肉をベルトで締め付けたり、スロートレーニングで筋肉が常に力を入れている状況を作り出したりすることでも速筋線維が稼働するようになります。これらのトレーニングでは筋肉内の酸素環境が悪化しますから遅筋繊維はスタミナ切れを起こし早い段階から速筋線維が働きだすようになります。

いずれの場合でも、速筋線維をフル稼働させて筋肉の成長を促す刺激を与えるためには、筋肉がもう動くことが出来ない限界まで行うことが大切です。筋肉にたくさんのエネルギーを使わせることで、代謝が活性化され筋肉を太く成長させることが出来ます。

さいごに

筋肉が成長する仕組みについては、筋肉の中で何が起こっているのかは徐々に解明されつつありますが、筋肉の成長へと導く刺激についてはまだ分かっていないことも多いです。

「メカニカルストレス」「代謝環境」「酸素環境」「ホルモン・成長因子」「筋線維の損傷・再生」の要因が複雑に絡み合っていると考えられていて、その中でも最も重要と考えられるのが「メカニカルストレス」です。

筋肉が成長するためには速筋線維をフル稼働させる必要があり、そのためにはある程度重い重量を扱い、限界まで動作を繰り返して筋肉により多くのエネルギーを使わせることが大切です。

今回紹介したのは、石井直方著「石井直方の筋肉の科学」の一部です。そのほかにも多数のトピックを取り扱っていて面白いので、興味があればぜひご一読ください。

筋肉が動く仕組みについて、運動単位とサイズの原理について下記の記事で解説していますのであわせてご覧ください。

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